
事例紹介
自己破産ケース紹介
大和市での法人自己破産事例
本店:神奈川県大和市内
業種:電気工事業
大和市に本社がある電気工事業を経営していた法人の自己破産です。
債権者は4社。約1億0400万円の債務が払えないとの相談で、会社破産の申立依頼がありました。
この記事は、
- 使途不明金が多い法人
- 大和市で自己破産を検討している法人
という人に役立つ内容です。
所轄官庁の確認
大手企業の下請けとして電気工事等を行っていた会社でした。
一般建設業として神奈川県知事許可を取得して業務を行っていた会社です。
従業員については、全員解雇済みでした。未払賃金はありませんでした。
株主は2名。大部分の株式を代表者が持っていた会社です。
本社事務所として利用していたのは、会社代表者が所有していた不動産でした。
こちらは任意売却をしており、明渡し済みでした。
法人破産での事業内容の報告
法人破産事件では、会社の事業内容を報告します。
破綻してしまった理由につながるものですし、財産や債務の調査にも使われます。
今回の会社では、主な事業は、元請から受注した工事を、孫請けの一人親方に発注するなどして行うものでした。
代表者は、電気工事士資格を取り、見習いとして勤めたあと、一人親方として仕事をするようになりました。
その後、有限会社を設立、これを株式会社にしたのが、破産会社でした。
下請会社間で工事を融通することもありました。
このような事業体のため、利益が安定せず、大赤字の時期もあれば、大きな黒字の時期もあるといった経営が続いていました。
借金理由
大きな借り入れがある場合には、その借金理由も説明しておきます。
大きな赤字をきっかけに、銀行から運転資金の借入れを行っていました。
その後は黒字化し、問題なく返済を継続できていました。もっとも、赤字に転落し、追加融資を受けることもあったため、借入残高は増減を繰り返していました。
数年前に、不足する運転資金の借入れをメインバンクに申込んだところ、断られてしまいました。
そのため、日本政策金融公庫からの借入れをするに至っています。
直近では、業績が好調になっていました。そのため、順次繰上返済を行っていました。
税金の負担
しかし、翌年、決算作業をする中で、予想以上の税負担が生じることがわかりました。
前期の業績が好調であったためですが、納税資金を残していなかったため、納付の目途がつかないこととなってしまいました。
新型コロナウイルス感染症流行に伴い、法人税等の申告が猶予されていたため、申告を延期し、その間に資金繰りをすることにしました。
翌年の税額が大きくなることは分かっていましたが、お金が不足した場合には銀行から借りるつもりとのことでした。これまでは銀行から借りることができたので、このときも銀行にも融資をお願いしたのですが、使途不明金が多すぎるなどの理由で断られてしまいました。
資金繰りの目途は立たず、ギャンブルに手を出し、納税資金を用意することはできませんでした。
猶予期間が終了し税務申告を行ったことで、法人税や消費税などが発生。
会社規模を縮小しつつ、資金繰りに奔走しましたが、資金繰りの目途が立たなかったことから従業員を解雇し、事業を停止したという流れでした。
黒字決算後の法人破産という内容です。大きな黒字計上で、ずさんな会計処理をしていると、資金がショートしてしまうこともあります。
黒字倒産の法人がなくならない理由です。
法人から代表者への貸付金
決算書上の数字は説明する必要があります。
会社の決算書に代表者個人に対する貸付金がありました。
確認すると、「使途不明金」を貸付金として会計処理したものとのことでした。
工事代金や給与の支払以外は、現金で管理し、支払っていたとのこと。決算のとき、領収書がない部分については、税理士が貸付金として処理していたそうです。
税理士から特段の指摘がなかったので、その様な支出と会計処理を続けていました。それが積み重なり、これだけの金額になってしまいました。かなり不正確な会計処理です。
そもそも経費で認められる支出を経費計上していないことになり、これで利益が出ていれば、税金がかかるのは当然です。消費税負担額にも影響があります。
税理士が会計指導をしておくべき事案だったといえます。
使途不明金の問題点
銀行から断られる理由になるほどの使途不明金がなぜ発生してしまったのか問題です。
会社経営は長いので、そのような杜撰な会計処理だった原因は確認しておく必要があるでしょう。
事情を確認すると、会計事務所の税理士がついていたものの、約3年前、以降の決算書作成などを断られてしまいました。それ以降、日常の経理と決算を自分で行うことにしたとのことでした。
その理由は不明ですが、一般的には、税理士は、依頼者からの資料提出をもとに会計処理をします。
十分な資料の提出がなければ、責任を持った業務ができません。おそらく、その提出の問題だったと思われます。
税理士が離れた後、他の税理士を探すこともなく、自分で会計処理をした点がさらに問題を悪化させてしまいました。
経理に詳しいわけではありませんでした。 それなのに、他人に相談なしで専門的な会計処理をするようにしてしまったとのことでした。
会社破産と使途不明金
税理士がついているころから、法人の使途不明金が増加していました。
それらが代表者の借入れとして会計処理されていました。
最終的には、法人から代表者への多額の貸付がされている決算書になっていました。
代表者が、会社のお金を自分のもののように使ってしまうと、現金がなくなります。そうすると、税理士としては、その現金はどうしたのか確認します。しかし、代表者から明確な答えがないと、使途不明金として取り扱うしかありません。その使途不明金としての処理として、代表者が出金しているのであれば、貸付などで処理するしかなくなってしまうのです。
貸付金ですので、いつか返済しないと、決算書に残ったままとなります。銀行がチェックしたときに不信感を抱かれるのは間違いありません。
ギャンブル支出以外にも、私的な消費や、愛人への支出などで、このような会計処理がされていることもあります。
不動産の任意売却と明渡し
本店所在地の土地建物については、代表者が所有し、会社へ賃貸する形となっていました。
法人の廃業等に伴い、不動産は第三者に任意売却し、明渡しも完了していました。
その際、残置物については所有権放棄し処理しているとのことでした。
法人の自己破産では、明渡作業が問題になりますが、代表者の所有物件の場合、この点は問題になりくいです。
法人破産と売掛金
法人破産の申立前に、売掛金の回収をすることもあります。
売掛金については、回収が遅れるほど、のちの回収率が下がってしまう傾向にあります。
早期に法人破産の申立を進めて破産管財人に引き継げればベストですが、通常は、自己破産の申立と並行して売掛金の回収も進めることが多いです。
その際、それまでの預金口座に入金させた場合に、差押えや相殺リスクがある場合には、弁護士の預り金口座に入金するよう変更を求めることもあります。
ただ、売掛金自体を差押えられてしまうと、厳しいので、多額の売掛金がある場合には、なるべく早く破産管財人に引き継ぎたいものです。売掛金から管財費用を捻出しようとしたものの差押えを受けて費用が準備できなくなる事例や、税金の差押えを受けてしまう事例もあります。
預金通帳の説明
法人の預貯金通帳には、多数の個人名の入出金があったのでその説明をしています。
従業員の給与支払や、下請業者への請負代金支払が多数あったため、それぞれ補足説明をしています。
法人破産と出資金
法人の資産の中には、出資金があることが多いです。
信用金庫、信用組合等の金融機関以外に、組合などに加入している場合には、脱退することでそこから出資金が戻ってくることがあります。我々のような弁護士でも協同組合の出資金があります。
そのような出資金も漏らさないようにします。
今回は、神奈川県電気工事組合に加入していたため、退会に伴い出資金の返金を受けています。
不動産売却後の使途
代表者個人資産でもギャンブル支出が多く認められました。
不動産売却代金を受領した以降に預金口座から約400万円の出金がありました。
これを、現金による勝馬投票券購入に主として使用してしまったとのことでした。競馬です。
また、通帳を見ていくと、1000万円以上の使途不明金がありました。
何に使ったのかについては、生活費、会社の仕入れ、現金による勝馬投票券との説明でした。
しかし、使途の内訳については、元々記録を付けていなかったこともあり、記憶は定かではなく、記録も残っていない状態でした。
あまりにも杜撰な会計処理がされてしまっている状態でした。
破産者が受領した不動産売却代金について、破産管財人から報告を求められています。
カード会社に対する返済や、離婚給付の支払にも使っているほか、法人の預金口座へ入金もしていました。
その他、関係者への返済、公租公課の支払い、転居費用にあてたほか、競馬に使ってしまったとのことでした。
競馬の馬券購入も現金のため、明確な資料が残っていない状態でした。
名義変更と否認行為
破産手続きでは、否認行為と呼ばれるものがあります。
破綻状態なのに、財産を他人名義に変更するような行為を含みます。
相談者の中には、財産名義を家族に変えれば処分されないと誤解している人も多いです。
しかし、破綻状態なのに、財産を家族に贈与すれば残せるとなれば、債権者からすればおかしい話です。
そのような名義変更は認められておらず、破産管財人は否認できます。否認権が行使されると、そのような名義変更は否定され、財産は破産者のもとなります。破産管財人が処分して代金は配当等に回すことになります。
今回の事例でも家族への車の名義変更が問題となり、破産管財人から否認該当行為であると指摘されています。
破産前の名義変更には注意し、弁護士に依頼しているのであれば、まず相談するようにしましょう。
自己破産と離婚給付
自宅の任意売却に伴い、妻との間で別居、離婚協議が行われました。
その際、離婚給付として300万円を支払うものとされました。
弁護士が関与していないため、曖昧な表現となっています。
その趣旨としては、清算的財産分与、扶養的財産分与、養育費等の趣旨でした。
妻の年齢を考慮すれば、再就職は容易ではなく、離婚後一定期間の生活費を確保する必要が存在したものと認められました。
相談者にはお子様がおり、成人しているものの、病気により就業することができない状況。未成熟子と同様に扶養義務があると認められました。
その他、家庭内で、仕事に行き詰まった際、食卓を叩く、物を投げるなど妻にあたることもありました。離婚裁判等であれば、暴言などして慰謝料が認められる可能性もありました。
これらの内容として、離婚給付をしたとのことでした。
ギャンブルに関する反省文
会社の金を誰にも相談なく 競馬に使ったことについて反省文を提出しています。
元々は、自分の給料から馬券を買っていたとのことでした。
それが、会計事務所などに毎月チェックしてもらわなくなり、会社のお金も競馬に使うようになってしまいます。
本来はチェックされていなくとも自重しなければならないのですが、経営者としての自覚がなかったとのことでした。ここから納税資金が不足してしまうことになったものです。
競馬で儲けて、借金など会社の支払いに使おうと思い、会社のお金で馬券を購入。
負け続けましたが、「いつかは儲かる」「いつかは負けた分取り戻せる」と思い馬券を購入し続けたとのことです。負けた分を取り戻すため、賭ける金額が段々と増えいきました。
負けが込むと、更にお金をつぎ込み、あり金を使い果たしました。資金繰りのため悩み、不眠症にまでなってしまったそうです。
ギャンブルやFX、信用取引で損失を出してしまう人にありがちな心理です。
これだけ競馬が問題になっているので、競馬歴が長いのかと思いきや、数年程度前から始めたとのことでした。
短期間に一気に使ってしまったというものです。
もともと会計処理が杜撰だったところに、短期間での使い込みが発生、使途不明金の金額が大きくなったので、税理士、銀行が対応できなくなったという流れのようでした。
自己破産と相続の主張
客観的にみると代表者には遺産分割未了の相続財産がありました。
自己破産のなかでは、たまにある問題です。家族間の話し合いで、自分は相続しないことを伝えていたものの、家庭裁判所への相続放棄はしていない、登記は亡くなった親名義のまま、というケースです。
評価額によって、破産管財人が遺産分割を進めることもありますが、換価不能として破産財団から放棄されるケースもあります。
今回もこのような遺産分割未了の不動産がありました。
相談者は実家を離れてしまい、実家の家族が母親の介護などを行っており、被相続人らに対する貢献が大きいことなどを考慮し、両親の遺産を受取らないこととし「相続分与を放棄します」などと記載した手紙を、共同相続人に送付していました。
この手紙は、遺産を受取らない意思が記載されており、相続分の放棄を通知するものと考えらるとの報告をしています。
法人破産の期間
代表者個人については9ヶ月、法人については、財団債権支払などがあり10ヶ月の期間で終了しています。
個人についての免責不許可事由の程度がひどく心配な事案でしたが、何とか裁量免責がもらえ、債務はなくなっています。
個人については税金滞納があっても非免責債権として支払義務が残ります。
これに対し、法人では、免責という概念がないため、破産手続きの終了により、法人格は消滅することで、終了となります。
法人の本店が大和市内にあったことから、横浜地方裁判所での手続でした。
大和市の法人で自己破産をご検討の方、自己破産のご相談は無料で受け付けています。
以下のボタンよりお申し込みください。