
FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.契約に必要な判断能力とは?
法律行為を有効に行うには意思能力(判断能力)が必要不可欠です。
認知症などで判断能力が低下すると、契約や遺言などの法律行為が無効となる可能性があります。本稿では、法律行為における判断能力の重要性、認知症患者の契約問題、成年後見制度の活用方法、そして実際の判例を交えながら、高齢社会における法的リスク回避のポイントを解説します。
日常生活に密着した法律行為を理解し、家族の安全を守るための知識として役立ててください。
この記事は、
- 高齢の親を持ち、財産管理や契約手続きに不安を感じる家族
- 成年後見制度の利用を検討している方
に役立つ内容です。
法律行為とは
まず「法律行為」とは何でしょうか。
簡単にいうと、自分の行為によって法律上の権利や義務が発生する行いのことです。
身近な例を挙げると、以下のようなものがあります。
契約を結ぶこと:たとえば、スーパーで買い物をしてお金を払えば、商品を受け取る「売買契約」という法律行為になります。携帯電話の利用契約や施設の入居契約など日常の様々な約束事が契約です。
遺言を書くこと:自分が亡くなった後の財産の分け方を決める遺言書も法律行為の一種です。
公正証書遺言のように公証人が作成に関与するものもありますが、基本的には本人の意思表示によって法的効果が生じます。
財産の売買や貸し借り:自宅や土地を売る・買う、不動産を誰かに貸す、あるいはお金を借りる契約をする、といった行為もすべて法律行為です。
預金の解約や各種手続き:銀行で定期預金を解約してお金を引き出すことや、役所に届け出をすることなども、その結果として権利義務が動くため法律行為に含まれます。
このように法律行為は日常生活に密着しています。そして法律行為を有効に行うには、それを行う本人に「判断能力」が求められます。では、その判断能力とは具体的に何を指すのでしょうか。
法律上の「意思能力」とは
法律の世界では、契約や遺言などの法律行為をする際に必要な判断能力のことを「意思能力」と呼ぶことが多いです。
意思能力とは「自分の行為がどんな結果をもたらすかを理解できる力」のことです。
「契約によってどのような権利義務が発生するか」を基本的に理解できる程度の知的水準が求められます。
判例・学説では、財産行為に関しては概ね7~10歳程度の判断能力があれば足りると解されています。
たとえば、極端な話、幼い子どもや重度の認知症の方、酔っぱらって意識がはっきりしない人などは、自分が何をしているか正しく理解できませんよね。これは意思能力を欠いています。
このように意思能力を欠いた状態で行われた法律行為は無効になります。
つまり、本人にその契約などを理解する力がなかった場合、最初から契約自体が成立しなかったものとみなされてしまうのです。
日本の民法でも、意思能力を有しない者の法律行為は無効とするとされています。
3条の2「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」
裏を返せば、法律行為が有効に成立するためには最低限その人に意思能力(判断能力)が備わっていなければならないということです。
このような基準は契約だけでなく遺言にも当てはまります。
遺言を書くときにも、遺言内容やその効果を理解・判断する遺言能力が必要で、判断能力が極めて低い状態で書かれた遺言書は後で無効と判断される可能性があります。
ところで「判断能力」という言葉自体は法律用語ではなく明確な定義がありませんが、一般には意思能力とほぼ同じ意味で使われます。
認知症の人の判断能力
認知症の方でも、症状の程度によって判断能力には幅があります。
認知症だからといって直ちに何も理解できなくなるわけではありません。軽度の認知症なら、日常的な簡単な取引であれば十分理解できる場合もあります。
たとえば、近所のスーパーでパンや牛乳を買うといった行為は比較的単純ですよね。
商品を買えばお金を支払うという仕組みを理解できれば、その小さな買い物の契約は有効に行えるでしょう。
一方で、取引の内容が複雑になるほど要求される判断能力のレベルも高くなります。
重要なのは、意思能力の有無が「行為の内容」「行為者の精神状態」「契約の複雑性」などによって個別判断される点です。
例えば、りんご一つを買う契約と自宅の不動産を売る契約では、後者のほうが圧倒的に複雑です。不動産の売買契約には難しい法律用語や手続き(契約不適合責任や手付金、登記の義務など)が絡みます。また、いつもやっている行為か、初めての行為かによっても理解度は変わってきます。
そのため、自宅を売るとなるとりんごを買うよりも高いレベルの判断能力が求められるわけです。
認知症の進行具合によっては、この複雑な契約内容を理解するのが難しくなることがあります。中等度~重度の認知症になると、金銭の計算や契約内容の把握が困難になり、本人だけで不動産を売ったり重要な契約を結んだりするのは現実的に難しくなるでしょう。
実際、認知症がかなり進んだ状態での契約はリスクが高いとされています。
せっかく契約を結んでも後から「本人に意思能力がなかった」として契約自体が無効と判断される恐れがあるからです。
なお、認知症と一口に言っても症状は日によって変動したり、得意な分野ではしっかりしていたりと個人差があります。判断能力はその時々の体調や環境にも左右されるため、「この病名だから絶対ダメ」と機械的に決まるものではありません。
周囲から見ると少し心配な状態でも、その契約内容については理解できていたから有効だったというケースもありますし、逆に、一見普通に会話できていても実は内容を理解していなかったというケースもあります。ポイントは「本人がその行為の意味と結果をしっかりわかっていたかどうか」なのです。
判断能力が不十分な場合の無効と取り消し
では、認知症の方が十分な判断能力を欠いた状態で契約などの法律行為をしてしまった場合、具体的にどんな影響があるのでしょうか。
大きく分けると「無効」になる場合と「取り消し」が可能な場合があります。
まず「無効」についてですが、先ほど触れたように本人に全く意思能力がなかったと認められる場合、その契約は最初から成立していないものと扱われます。
極端な例として、重度の認知症で契約の意味を全く理解できないお年寄りに高額商品を売りつけても、それは契約とはいえません。
後から家族がその事実に気づいたら、「本人は契約の意味を理解していなかったのだから契約は無効です」と主張できる可能性があります。
無効となれば、商品を返して代金も返してもらうなど、元の状態に戻すことになります。
次に、「取り消し」について。
こちらは法律上一度成立した契約を後から無効にできる仕組みです。
未成年者(子ども)が親の同意なく契約した場合に親が取り消せる、といった例が代表的ですが、認知症の場合も特定の条件で取り消しが認められます。
行為能力がない人の契約を取り消せるとしています。行為能力制度は、判断能力が不十分な者を包括的に保護する制度として成年後見法に基づくが、これに対し意思能力制度は個別行為の無効を主張する救済手段として機能します。
例えば、家庭裁判所により成年後見人が付けられた後であれば、その成年後見人は被後見人(認知症のご本人)が結んだ不利益な契約を取り消すことができます。
ただし、注意したいのは、取り消しができるのは後見開始後に本人が行った契約に限られるという点です。
後見人を付ける前に本人が契約してしまっていた場合、「当時意思能力がなかったから無効だ」と主張することは可能ですが、厳密な意味で後見人の「取消権」を使えるわけではありません。
後見人をつける場合には、診断書などの医療情報が必要となります。その情報によっては、いつ頃から判断能力がない状態だったといえるのか推測することもできます。成年後見人が、過去の高額取引、問題取引については、無効だと主張することはよくあります。
いずれにせよ、判断能力が不十分な状態で結ばれた契約はそのまま有効とはならない場合があるということです。
契約の相手方にとっても、後で無効だ取消だともめるのは避けたいところですから、認知症の方との重要な契約には慎重にならざるを得ません。
実際、銀行や不動産業者などは本人や家族の様子から「判断能力が怪しい」と感じると取引にストップをかけることがあります。
たとえば、高齢のお客様が急に多額の現金を引き出そうとした際に、銀行員が不審に思って家族に連絡するといったケースですね。これは本人を守る意味もありますが、銀行側としてもトラブルに巻き込まれたくないという事情があります。
認知症の人の遺言
契約以外でも、認知症の方が書いた遺言書が無効と判断されることもあります。
遺言の場合はその人が亡くなった後に内容が問題になるため、生前に「これは無効だ」と確認するのが難しい面があります。
家族間で遺言の有効性を巡って争いになるケースもありますが、裁判所は遺言者の認知症の診断記録や日記・手紙など様々な証拠から遺言時に遺言能力があったかどうかを慎重に判断します。
実際に、公証人が関与して作成された公正証書遺言であっても、遺言者の判断能力が失われていたとして無効と認定された例もあります(公正証書だから絶対安心というわけではないのです)。
成年後見制度とは
判断能力が低下した人を法律的に保護し支援する仕組みとして、「成年後見制度」があります。
契約などを取り消しできる制度です。
これは認知症などで判断能力が十分でない方(本人)を支援するために、家庭裁判所が後見人等を選んで代理で財産管理や契約締結を行えるようにする制度です。
成年後見制度には大きく分けて法定後見と任意後見の2種類がありますが、ここではまず一般的な法定後見制度について説明します。
法定後見制度では、本人の判断能力の程度に応じて次の3つの類型があります。
後見(こうけん):判断能力がほとんどない状態の場合。
選ばれた成年後見人が本人を代理してほぼすべての法律行為を行います。
たとえば、重度の認知症で財産管理が全くできないお年寄りには後見人が付され、預貯金の管理や介護サービス契約の締結などを代行します。本人が自分で契約等を結んでも、後から後見人が取り消すことができます(※日常生活に関する小さな行為は除きます。日用品の購入など生活に必要な行為まで取り消されると困ってしまいますから)。
保佐(ほさ):判断能力が著しく不十分な状態の場合。
家庭裁判所により保佐人という支援者が選ばれ、本人が重要な財産行為をする際には保佐人の同意が必要になります。例えば、不動産を処分するときなど、保佐人の同意がない契約は後から取り消せます。
一方、日常的な買い物などは本人の判断でできます。
補助(ほじょ):判断能力が不十分な場合(保佐より軽度)。
家庭裁判所が選ぶ補助人が、本人と特定の範囲の法律行為について一緒に行ったり代理したりする形です。どの行為について補助人の助けを受けるかは、本人や家族の申立て内容によって決まります。比較的本人の能力が残っているケースで、できない部分だけサポートするイメージです。
成年後見制度等を利用するには、家族などが家庭裁判所に申立てを行い、医学的な意見書などを添えて審査を受ける必要があります。後見人等には親族が選ばれることもあれば、専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)が選ばれることもあります。
後見人等に選ばれた人は、家庭裁判所の監督の下で本人の財産を管理したり、必要な契約を結んだりします。例えば、認知症の方が老人ホームに入所するため家を売却しなければならない場合、後見人が代わりに売買契約を結ぶことができます。
ただし、後見人といえども何でも自由にできるわけではなく、本人に明らかに不利益な行為はできないよう制限があります。先ほど触れたように、本人の住む自宅を売るようなケースでは家庭裁判所の許可が必要だったり、慎重な判断が求められます。
任意後見制度
成年後見制度は本人を悪質な契約被害などから守るうえで有用ですが、同時に本人の自由も制限する側面があります。成年後見人が付くと本人は原則として重要な契約を自分一人では行えなくなります。
「判断能力が不十分だから仕方ない」とはいえ、本人のプライドや意欲を損なわないよう配慮することも大切です。そこで活用したいのが、本人が元気なうちに自分で後見人を決めておく「任意後見制度」です。
任意後見制度では、将来自分の判断能力が低下したときに備えてあらかじめ信頼できる人と任意後見契約を結んでおくことができます。判断能力がしっかりしているうちに公正証書で契約を作成し、いざ発動が必要になった時に家庭裁判所の手続を経てその人に後見人になってもらう仕組みです。
法定後見制度では、裁判所が後見人等を選びますが、任意後見では自分で選べるわけです。
こうしておけば、万一判断能力が低下してもスムーズに信頼できる人にサポートしてもらえるため、安心感が違います。
実際の事例紹介:判断能力が問題となったケース
最後に、認知症による判断能力低下が絡む実際のケースを3つご紹介します。
〈ケース1:認知症の母が高額な訪問販売契約を結んでしまった〉
80代の母親を持つAさんは、ある日、母宛てに高額な健康器具の請求書が届いて驚きました。
話を聞くと、母親は数週間前、自宅に来た訪問販売のセールスマンから勧められるまま高額商品の購入契約を書面で結んでしまっていたのです。
母親には軽度~中等度の認知症の診断があり、普段から判断力に不安があったため、Aさんはすぐに契約解除を検討しました。このケースではまずクーリングオフが使えないか確認しました。
訪問販売の場合、契約書面を受け取ってから8日以内であれば無条件で契約を解除できる制度があります。幸い請求書が来た時点でまだ期間内だったため、Aさんは業者に対し書面でクーリングオフを申し出て契約を解除することができました。
もし、クーリングオフ期間が過ぎていた場合でも、「母は契約の意味を理解できる状態になかった」と主張して契約無効を訴えることも検討する必要がありました。
消費者契約法という法律にも、事業者が消費者の判断力の低下に乗じて不当な勧誘をした場合には契約を取り消せる規定があります。
最終的にこのケースではクーリングオフが成功しましたが、もし対応が遅れていたら法律の専門家に依頼して無効主張などを行う段取りでした。
なお、意思能力を争う裁判では、契約締結時の認知機能検査結果(長谷川式スケールやMMSEスコア)、医師の診断記録、契約内容の合理性、契約締結プロセスの適正性などが総合的に検証されます。
〈ケース2:認知症の父が遺言を書いたが無効と判断された〉
Bさんの父親(85歳)は生前、公正証書遺言で全財産を長男に相続させる内容の遺言を書いていました。
ところが、父親は遺言書作成時すでに認知症がかなり進行しており、日常会話にも混乱が見られる状態でした。
父親の死後、遺言の内容に不満を持つ次男は「父は遺言の意味を理解できる状況になかったはずだ」として遺言の無効を主張しました。
遺言無効確認訴訟の裁判になり、医療記録や当時の状況が詳しく調べられた結果、裁判所は父親には遺言時に意思能力が欠けていたと判断し、公正証書による遺言を無効とする判決を下しました。
公証人が作成に関与した遺言でも、本人の判断能力が著しく低下していた場合には法的効力が否定される一例です。
このケースでは、結局、遺言書が無効となったため法定相続(遺言がない場合の通常の相続分配ルール)に従って遺産分割が行われました。
長男としては非常に残念な結果ですが、遺言を書くタイミングではっきりと判断能力があったかどうかがいかに重要かを物語っています。このように、認知症が絡む法律行為の問題は実際に起こり得ます。大事なのは、事前にそうした事態を予防・対策しておくことです。
〈ケース3:無効主張が退けられた事例〉
2023年大阪高裁判決では、軽度認知症患者の定期預金契約が有効と判断されています。
その主な理由は次のようなものでした。
契約内容が単純明瞭で理解容易
契約書面に本人自筆のサインと捺印あり
契約目的が老後資金の保全という合理的動機
金融機関側が認知症疑いを認識する客観的状況なし
この判決は、認知症診断の有無だけでなく、契約の実質的内容と締結プロセスの適正性が重要であることを示しています。
家族ができる対策
認知症の方が安心して生活できるよう、家族ができる対策をいくつか挙げます。
早めの話し合いと財産把握
まずは本人がまだしっかりしているうちに、財産の状況や今後の希望について話し合っておきましょう。
預貯金や不動産がどこにどれだけあるか、日常の支払いはどうしているかなど、家族が把握しておくことはとても大切です。後になって「あれも契約していた」「どこに口座があるか不明」では対応が遅れてしまいます。
ネット銀行、ネット証券、保険証券のウェブ化が進んでいることや暗号資産などもあり、荷物から財産につながる手がかりを得にくくなっています。
高齢者に限らず、自分の財産としてどのようなものがあるのか整理し、目録などにしておくのが家族にとっても望ましいでしょう。
任意後見契約や財産管理の委任
前述の任意後見制度を利用して、将来に備えておくのは有効な対策です。
信頼できる親族や知人がいれば、公正証書で任意後見契約を結んでおくことで、判断能力低下後のサポートをスムーズに受けられます。
また、任意後見以外にも財産管理の委任状(委任契約)を作成し、まだ判断能力があるうちに特定の人に銀行手続きなどを代理してもらう権限を与えておく方法もあります。
ただし、通常の委任契約は本人の判断能力が失われると効力を失ってしまうため、将来を見据えるなら任意後見契約が確実です。
このような契約がなく、相続発生後に、生前の預貯金口座からの出金や、お金の使い道が問われることもあります。
成年後見制度の申立て準備
任意後見契約ができず、認知症の症状が進んできて日常生活に支障が出始めたら、早めに成年後見制度の利用を検討しましょう。判断能力がかなり低下してから慌てて申し立てるより、多少余裕をもって手続きを進めたほうがスムーズです。
家庭裁判所への申立てには医師の診断書が必要ですし、候補者選びや親族間の話し合いも要します。「まだ大丈夫」と思っていても、ある日急に判断力が落ちることもあります。いざという時に備え、地域包括支援センターや弁護士・司法書士など専門家に相談して準備を進めておくと安心です。
日常の見守りと悪質商法への注意
後見人などがついておらず、本人の法的な能力があるとされている場合、認知症の方は悪質商法や詐欺のターゲットにされやすい面があります。
家族が普段から郵便物や電話の様子に目を配り、不審な業者と接触していないか気にかけてあげましょう。
訪問販売員が頻繁に出入りしていないか近所の方と情報共有するのも有効です。
また、必要に応じて電話を留守番電話設定にしたり、訪問販売お断りの表示を出すなど環境整備も検討してください。万一、高額商品を契約してしまった場合は前述のようにクーリングオフや取消しの手段がありますから、泣き寝入りせず早めに行動しましょう。消費生活センターや警察の相談窓口に連絡するのも有効です。
本人の意思を尊重しつつサポート
とはいえ、何でも家族が取り上げてしまうと本人の自尊心を傷つけかねません。できることは本人にやってもらい、難しい部分だけさりげなくフォローする姿勢が大切です。買い物も、金額の大きいものは一緒に行くようにするけど日用品の購入は今まで通り小遣いの範囲で任せる、などメリハリをつけると良いでしょう。本人が安心感を持って生活できるよう、「大事なことは一緒に考えるからね」と寄り添った姿勢で接することが何よりの支えになります。
法律行為と判断能力のポイント
認知症と法律行為の関係について、重要なポイントをまとめます。
法律行為(契約や遺言など)を有効に行うには、本人にそれを理解する判断能力(意思能力)が必要です。判断能力がない状態で行われた契約は無効になる可能性があります。
認知症になると判断能力が低下しがちですが、程度は様々です。軽度であれば簡単な契約は問題なくできることもありますが、重度になると重要な取引は本人だけでは難しくなります。取引の複雑さによって要求される理解力のレベルも違います。
本人の判断能力が不十分なまま契約を結ぶと、後で契約の無効主張や取消しといった事態になり得ます。せっかく結んだ契約が無効になればお互いにとって不利益ですし、トラブルにも発展しかねません。周囲も契約の場面では本人の様子に注意を払いましょう。
成年後見制度は認知症の方を法的に支援する有力な手段です。判断能力の程度に応じて後見人・保佐人・補助人が本人をサポートし、本人を不利益から守ります。必要に応じて早めに家庭裁判所への相談・申立てを検討しましょう。任意後見契約を活用すれば、本人が望む代理人に将来備えてもらうことも可能です。
家族としては事前の準備と日頃の見守りが大切です。財産管理の仕組みを整え、悪質商法に引っかからないよう注意し、本人の意思を尊重しながら必要な手助けをしましょう。困ったときは一人で抱えこまず専門家に相談することも大事です。
高齢者を相手にする契約では、後に無効を主張されないよう対策しておく必要があります。
本人の意思確認を録音録画したり、契約書だけではなく、契約内容を平易な言葉で説明した説明書の交付などです。
親族との取引や遺言であれば、医師の診断書または認知機能検査をしておく、添付するなどの方法もあるでしょう。
争われたときに、もっとも重視される証拠は医療記録です。
ご相談をご希望の場合には、お電話または相談予約フォームよりご連絡ください。
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