
FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.訴訟予告、提訴予告通知とは?
裁判の予告状には、一般的な督促状と民事訴訟法上の提訴予告通知の2種類があります。
多くの場合は消費者金融やクレジットカード会社からの督促状であり、支払いを促す最後の警告として送られてきます。
この記事では、各種類の予告状の特徴や受け取った際の適切な対応方法、さらには債務整理や消滅時効の可能性まで、実務的な観点から詳しく解説していきます。
この記事は、
- 債権回収会社等から訴訟予告書を受け取った人
- 提訴予告通知を受け取った人
に役立つ内容です。
裁判の予告状
訴訟の予告や、提訴予告という書面を受け取ったという相談は多いです。
このような書類には、督促状などの一般文書のほか、民事訴訟法上の提訴予告通知である場合があります。
受領した書面がどちらのものか確認しましょう。
ほとんどの場合には、単に借金の督促状かと思いますので、そちらから解説していきます。
訴訟予告書とは
訴訟予告書は、消費者金融やクレジットカード会社など、お金を貸した会社(債権者)が、「このまま返済が滞ると法的手段を取らざるを得ません」「期限を過ぎたら訴訟を提起する予定です」等という最後の警告として送ってくる文書です。書面のタイトルは、「訴訟等申立通知書」「法的措置予告通知」などの場合もあります。
消費者金融などの貸金業者のほか、保証会社や、元の貸主から債権を買い取った債権回収会社からも届くことがあります。
訴訟予告の目的
返済が遅れている借主に対し、訴訟を起こす際、別に予告をする必要はありません。実際に、予告なく裁判を起こされ、裁判所からの手紙が届くということもあります。
それにも関わらず、訴訟予告をするのはどうしてでしょうか。
実は、訴訟予告書には隠された本当の目的があります。訴訟予告をすることで支払を促すというものです。
「できれば裁判は避けたい」というのが債権者の本音です。なぜなら、裁判を起こすには債権者側にも相当な費用と手間がかかるからです。
例えば、弁護士に依頼すればその費用や、裁判所への手数料、書類作成の手間など、決して少なくない負担が発生します。
訴訟予告をすることで、支払ってもらえるのであればありがたいと考えているわけです。
訴訟予告書を放置すると起こりうること
訴訟予告書で「2週間以内に連絡がない場合は法的手段を取る」と書かれていたとします。
連絡もせず、放置・無視し、この期限を過ぎた場合、何パターンかの展開が考えられます。
・予告通りに訴訟が提起される
予告が本当だった場合ですね。
この場合、裁判所から「訴状」が届き、正式な裁判手続きが始まります。債権者からの手紙ではなく、裁判所からの特別送達という郵便で届きます。
これまで無視してしまうと、あなたの言い分を全く聞かれないまま、債権者の主張がすべて認められてしまう「欠席判決」が出されます。
5年の消滅時効期間が過ぎている場合などは、裁判を起こされたタイミングで援用しておく必要があります。
判決には既判力があるため、あとから時効だったと主張することはできなくなります。
裁判所の判決が出てしまうと、財産や給料の差し押さえがされることも多いです。
・支払督促が申し立てられる場合
訴訟よりも簡易な手続きである支払督促が届くことがあります。
これも無視は禁物です。「仮執行宣言付支払督促」まで放置すると、あっという間に給料や預金が差し押さえられるリスクが生じます。
訴訟よりもコストも低いので、債権者が支払督促を選ぶことがあります。
この申立がされた時点で消滅時効の主張ができたという場合、判決とは異なり、消滅時効の主張をあとからできる可能性はあるのですが、差し押さえされるリスクはあるので、届いた時点で放置せずに対応したほうが良いでしょう。
・ただ単に請求が続く
訴訟予告がされたものの、実際には訴訟までされず、延々と請求が続くこともあります。何度も訴訟予告が届くことがあります。
時効期間がすでに過ぎているような債権では、裁判まで起こされずにこのような状態になることもあります。
・何も起きない
裁判も起こされず、請求書も届かなくなることもあります。
とりあえず、しばらく様子見という対応を債権者がとっている場合です。
そのまま放置されて消滅時効期間がすぎることもあります。
消滅時効の可能性
借金には「消滅時効」という味方がいる可能性があります。
たとえば、5年以上前の借金で、その間まったく返済や連絡をしていない場合、時効が完成している可能性が高いのです。
時効期間に関しては以下の法改正があります。
【2020年4月1日より前の借金の場合】
友人からの個人借入:10年
銀行やカードローン:5年
【2020年4月1日以降の借金の場合】
基本は権利を行使できることを知った時から5年
または権利を行使できる時から10年
ただ、消費者金融等は、権利行使できると知っているものですので、法改正の前後かわらず、5年の時効期間となります。
時効がリセットされる行為
時効期間の間に、時効をリセットなどする行為があります。
裁判のほか、債務を承認する行為は、ここに含まれます。
「とりあえず1万円だけでも払います」と約束してしまう
「分割で払いたいのですが」と相談の電話をする
これらの行動は「債務の承認」となり、せっかくの時効の利益を失ってしまう可能性があります。
訴訟予告書を受け取り、あわててこのような連絡をした結果、消滅時効の援用ができずに、遅延損害金を含めて支払わなければならなくなることもあります。
債務整理という解決策
時効が完成していない場合は、支払義務があることになります。
借金の解決方法としては、約束通りの支払をする以外に債務整理があります。
任意整理は、債権者と交渉して、無理のない返済計画を立てる方法です。ただ、遅延損害金が多額に発生している時効ギリギリの債権の場合には、支払い額も高くなります。
個人再生は、裁判所に申し立てをして、大幅な減額をしてもらい分割払いにする制度、自己破産は借金をゼロにしてもらう制度です。
いずれの手続きも、裁判を起こされてからの準備だと、差押リスクが高くなってしまいますので、早めに専門家に相談した方が良いでしょう。
訴訟予告書を受け取ったらすべきこと
慌てて債権者に連絡しないほうが良いです。
焦って連絡すると、時効の利益を失う可能性があるからです。
まずは、いつの借金か確認しましょう。古い借金なら時効の可能性を検討できます。
時効期間が過ぎているのであれば、専門家に相談するなどして時効援用を進めることもできます。
民事訴訟法上の提訴予告
借金の請求で受ける人はほとんどいないと思いますが、訴訟の予告として、民事訴訟法では、提訴予告制度というものがあります(132条の2)。
訴訟予告の趣旨で、この書面を受け取ったときは、ただの請求書とは違うと分類しておきましょう。
提訴予告通知制度とは
2003年(平成15年)、より効率的な裁判手続きを実現するため、民事訴訟法が改正され、つくられた制度です。
この制度は、裁判を始める前に必要な情報を集めることができるものです。
トラブルの相手に裁判前に資料を出させたいという場合に使うことができる制度です。
流れとして、提訴予告通知を送ります。これは、「裁判を起こそうと考えています」という予告状のようなものです。
この予告通知により、提訴前照会ができます。 相手方に質問や資料の提出を求める手続きです。
さらに、提訴前証拠収集処分もあります。弁護士会照会などでも収集でえきない証拠について、裁判所の力を借りて集める手続きです。
提訴予告通知のポイント
民事訴訟法の提訴予告通知の場合、裁判を起こそうとしている人が、被告としようとしている人(相手方)に対して出します。
裁判を起こす予定があることと、その内容を通知します。これにより、証拠や情報を集めるための特別な手続きが使えるのです。
提訴予告通知は、必ず書面で行うものとされます。
具体的な記載事項として、訴訟の概要として紛争の要点なども記載します。
請求の内容(例:「損害賠償として1000万円を請求する予定です」)
争いの中心となる点(例:「手術の際の医師の過失が争点となります」)
訴訟を起こす予定時期の記載もします。
例:「本通知から4か月以内に提訴する予定」
この提訴予告通知を受け取った側の対応としては、同時に照会がされているのであれば、まず回答を送る必要があります。
提訴予告通知は、他の通知(例:提訴前照会)と兼ねることが可能です。
制度としては便利なものですが、実務上はあまり使われていないです。少なくとも、提訴予告通知が届いたので対応を相談したい、という相談は過去に受けたことがありません。
証拠収集方法として、過去に数回、利用したことはあります。
そのような感覚ですので、提訴予告の書面を受け取ったという相談のほとんどは、借金の督促状で、消滅時効の援用ができるかどうかの相談です。
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