離婚判決・財産分与後に再度の財産分与請求はできないとした裁判例を弁護士が解説

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FAQ(よくある質問)

 

Q.再度の財産分与請求はできる?

一度、離婚裁判などで財産分与の話が決まった後、新たな財産が判明したとして財産分与請求をしたものの否定された裁判例があります。

基本的には、再度の財産分与請求はできないとされています。

東京高等裁判所令和4年3月11日決定を紹介します。

この記事は、

  • 財産分与の紛争中の人
  • 財産分与の請求をされている人

に役立つ内容です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.6.21

 

新たな財産分与請求

XとYは離婚判決が確定した元夫婦。

判決では財産分与が決定されていました。

しかし、X(元夫)は、Y(元妻)が保有する有限会社の持分について判決で考慮されなかったとして、新たに財産分与を求めました。


横浜家庭裁判所(令和3年10月15日)は、判決で包括的な財産分与が既に決定されていることを理由に、Xの申立てを却下。これに対してXは不服として即時抗告しました。

 

離婚裁判、財産分与の流れ

Xは医師として開業しており、Yはその業務を手伝っていました。

Yは特例有限会社の持分2100口を保有していましたが、平成23年からXとYは別居状態。

Xが離婚と慰謝料を求める訴訟を提起。Yが反訴として慰謝料および財産分与を求めました。

平成29年に離婚判決が出され、XがYに4538万8386円を清算的財産分与として支払うよう命じられました。

 

令和元年、XはYに対し、判決で考慮されなかった財産を含む新たな財産分与を求める調停申し立て。

調停は不成立となり、審判に移行。

Xは、判決後に明らかになった本件会社の持分の2分の1を分与するよう求めました。

既に財産分与がなされたのちに重ねて財産分与を請求することができるか否かについて争われました。

 

家庭裁判所の判断

横浜家庭裁判所は、以下の理由でXの申立てを棄却しました。

既に財産分与が確定しているため、重ねて財産分与を求めることはできないと判断。
離婚判決における財産分与は、婚姻中に得た全ての財産を清算するものであり、再度の申立ては認められないとしました。

財産分与請求権は、当事者双方がその協力によって得た一切の財産の清算を含む1個の抽象的請求権として発生するものであるから、財産分与の額及び方法を定める内容の協議や判決等が成立ないし確定したときは、その効力として、特に明示的に除外しない限り、当事者双方がその協力によって得た財産全部の清算をするものとして具体的内容が形成されるから、上記協議や判決等が無効ではない限り、当事者は、重ねて清算的財産分与を求めることはできないものと解するのが相当である。

 

高等裁判所も再度の財産分与は不可

東京高等裁判所令和4年3月11日決定は、家庭裁判所の判断を指示、再度の財産分与請求は認められないとしました。

主文は本件抗告を棄却するというものでした。

1. 原審は、離婚判決により既に財産分与が確定しているため、新たに財産分与を申し立てることは認められないとしました。
2. 東京高等裁判所も、財産分与請求権は離婚判決の確定によって確定されるものであり、判決後に新たな財産が明らかになったとしても、再度の財産分与の申立ては認められないと判断しました。
3. 抗告人が新たに明らかになったと主張する財産(出資口数等)は、離婚判決時点で考慮されるべきものであり、後になって再度財産分与を求めることはできないと結論づけました。

 

財産分与の根拠条文

民法768条は、協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができ、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、離婚の時から2年以内に限り、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができること、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める旨を定めており、同条は裁判上の離婚において準用されています(民法771条)。

 

財産分与請求の法的性質

そして、このような離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持を図ることを目的とするものであるところ、上記民法が規定する財産分与請求権は、1個の私権たる性格を有するものではあるが、その範囲及び内容が不確定・不明確なもので、協議あるいは審判等によって具体的内容が形成されるものと解されるとしています。

 

また、離婚の訴えに附帯して財産の分与の申立てをする当事者は、分与を求める額および方法を特定して申立てをすることを要するものではなく、単に抽象的に財産の分与の申立てをすれば足りるものと解されます。

財産分与の申立てに対し、裁判所は、清算的財産分与として、当事者双方がその協力によって得た財産の額を考慮事情として認定し、当事者の財産形成の寄与の程度のほか、その他一切の事情を考慮して(一切の事情として、補充的に慰謝料的財産分与や扶養的財産分与を考慮することもある。)、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めることになります。

この裁判手続は、離婚訴訟の附帯処分として審理される場合においても、非訟事件手続として審理されるものであるから、裁判所は、その判断において、当事者の主張に拘束されることはなく、財産分与の申立てをしていない当事者に対して財産の分与をすることもできます。

以上の財産分与に関する民法の規定及び判例法理等に照らすと、財産分与請求権は、当事者双方がその協力によって得た一切の財産の清算を含む1個の抽象的請求権として発生するもので、清算的財産分与の対象となる個々の財産について認められる権利ではないのであるから、裁判所が、その協議に代わる処分の請求に基づいて、財産分与の額及び方法を定める内容の判決等が確定したときは、その効力として、当事者双方がその協力によって得た財産全部の清算をするものとして具体的内容が形成されるものであるとしました。

したがって、上記判決等が有効に確定したものである限り、当事者は、上記判決等において考慮されていない財産があることを理由に、当該財産について、重ねて清算的財産分与を求めることはできないものと解するのが相当。


知らなかった財産でも不可

たとえ当事者が、前件判決において、本件申立て理由に係る財産が財産分与の対象となる旨の認識を有しておらず、あるいは同財産の存在について何らの主張立証をしていなかったとしても、これらの財産について重ねて財産分与の申立てをすることはできないといわざるを得ないとしています。

仮に、抗告人が主張するとおり、本件社員権等の財産が前件判決の確定後に財産分与の対象となるべき財産であることが明らかになったものであるとしても、財産分与請求権は清算的財産分与の対象となる個々の財産ごとに認められる権利ではないから、これらの財産について、重ねて財産分与の協議に代わる処分を裁判所に求めることができないとして、財産分与請求を否定しています。

 

最初の離婚裁判・財産分与請求の時点で、もれなく主張しておく必要があるということです。

 

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