
FAQよくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.現金、動産の差押え手続、禁止される金額は?
現金の差押えは、動産執行の手続を利用します。
とはいえ、66万円が差押え禁止財産となっているので、これを上回る金額があれば差押えができます。
この記事は、
- 現金の差押え、動産差押え手続をしたい人
- 現金や動産の差押えが不安な人
に役立つ内容です。
差押えの手続
差し押さえ手続きで、現金はどのような取り扱いをされるのでしょうか。
今回の差押えは、裁判所を使った民事事件の差押えの話です。
差し押さえ手続きは、法的には強制執行と呼ばれます。
民事執行法で決められているルールです。
この強制執行手続きでは、申し立てをする際に、債権者が何を差し押さえるのか財産を特定する必要があります。
差し押さえる対象財産で手続が変わる
それによって、それぞれ手続きが違ってきます。
例えば、不動産を差し押さえるのであれば、不動産の執行手続き、預金口座や給料を差し押さえるのであれば、債権執行手続きを申し立てることになります。
そして、現金の差し押さえについては、動産執行手続きとなります。
預金も現金も差押えたい、という場合には、全く別の手続を申し立てる必要があります。
差し押さえに必要な債務名義
差し押さえの強制執行手続きでは、申し立てをするために、債務名義が必要です。
債務名義とは何かというと、強制執行をするための根拠となる書類です。
裁判所の判決や、裁判所での和解調書など、裁判所で作られた書類が典型的です。
また、公証役場で作った公正証書でも、「支払いを怠った際には強制執行することを認める」という執行認諾条項が入っている場合は、債務名義となります。
このような債務名義がなければ、税金などではない普通の債権で、直ちに差し押さえをすることはできません。
まず、債務名義を取るために、裁判を起こすなどの手続きが先行します。
すでに裁判所で判決が出ているようなケースでは、いつでも差し押さえを申し立てることができる状態です。
現金の差押えを含む動産執行の要件
現金の差し押さえを含む動産執行手続きは、元の債権が、金銭債権であり、差し押さえの対象物が動産という手続です。
動産執行は、債務者が持っている動産を差し押さえて、これを売却し、その代金を執行債権に充当して回収するというものです。
要件としては、執行債権が金銭債権、つまり金銭の支払いを目的とするものである事が必要です。借金の返済などの債権です。
例えば、「動産を引き渡せ」という内容の判決では、金銭の支払いを目的とした判決ではないので、動産を差し押さえる動産執行手続きは使えないことになります。
あくまで「金銭を払え」という判決等が必要になってくるのです。
次に、執行の対象物は動産であることが、動産執行の要件になります。
動産とは、土地及びその定着物以外のものと定義されます。
動産執行の管轄裁判所
現金の差押えを含む動産執行申し立てるには、裁判所に申立書を提出します。
管轄裁判所は、差し押さえるべき動産の所在地を管轄する地方裁判所となります。
債務者の自宅内の動産を差し押さえるのであれば、相手の住所地を管轄する地方裁判所へ申し立てます。
動産執行の対象外とされるもの
動産と定義されるものでも、登録または登記された自動車や、建設機械、小型船舶等については特別法が定められています。
そのため、動産執行では対象外とされます。
また、差押え禁止財産も多くあります。
動産の差押えでは、差押えが禁止されているものも多いです。
債務者の持っている動産であっても、生活必需品まで差し押さえをしてしまうと、生活が成り立たないので、法律で差し押さえ禁止財産が決められています。
差押え禁止財産
生活に欠くことのできない衣服や寝具、家具、台所用品、畳、建具や一定期間の食料、小規模事業者の必要な器具、帳簿類、義手、義足、補聴器等、車いすなども禁止です。
教育施設における学習用品なども差し押さえ禁止とされています。
現金の差し押さえ禁止
差押え禁止財産の中で、現金についても、一定金額までは差し押さえ禁止とされています。
標準的な世代の2か月分の必要生活費が差押え禁止になっています。
この額は、政令で定める額とし、現在は、2か月分で66万円とされています。
債務者の自宅内の動産を差押えに行き、現金があっても、66万円までは差押えができないことになります。
動産の差し押さえをしたときに、自宅に一定額の現金があっても、66万円までは差し押さえができず、これを超える部分が差し押さえ対象となります。
自己破産手続き等の自由財産
自己破産手続きでは、自由財産という概念があり、一定の現金は残せる扱いになっています。
その際に、この差押え禁止の現金が基準になっていまう。
破産法34条1項は、破産財団に属しない(処分されない)財産を決めています。
そのなかで、現金については、「民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭」とされています。
差押え禁止財産の2分の3の金額が自由財産となります。
66万円の2分の3で99万円が自由財産とされるのは、民事執行法の差押え禁止の現金額から算出されるのです。
ただし、破産申立直近の現金化は、現金化前の財産と同視され、現金扱いとされないので注意してください。
動産に対する執行方法
現金の差し押さえを含む動産の強制執行では、特定の場所にある動産が差押えの対象になります。
これは、申立人が決めることになります。
その決められた目的物の所在場所に裁判所の執行官が行きます。
そこで、執行官が、動産を発見すれば、その動産を占有することになります。
差し押さえをする動産の選択は、執行官の裁量に任されているといわれます。
債権者の利益を害しない限りは、債務者の利益を考慮すべきものとされています。
また、換価性のない動産は差し押さえるべきではないとされています。差し押さえても意味がないからです。
そのため、現金や、換価ができるものから順番に差し押さえをすることになります。
この際、差し押さえ禁止動産はもちろん差し押さえができないことになります。
また、差し押さえの申し立てをされた債権者の債権金額や、強制執行費用に必要な限度を超えて差し押さえることもできません。
必要以上に差押えをしてはいけないということです。
差押え後の動産
差し押さえ後の動産については、執行官が自ら占有することもできますし、裁量で債務者に保管させたり使用を許すこともできます。
この場合、差し押さえ物には封印をし、保管者に対して、処分や差し押さえの表示の損壊等をした場合の制裁を告知することになっています。
執行官の保管について、差押えた動産が、金銭や貴金属、カメラ、有価証券等紛失するリスクが高いものに関しては、執行官自身が保管するのが相当とされています。
そのようなもの以外の動産については、債務者に保管させておくことも少なくないです。
動産差押えと家族の所有物
動産に対する差し押さえは、原則として債務者が占有する動産に対ししなければならないとされています。
現金も同じ扱いになります。
ここでの占有とは、債務者がそのものに対して、外観上直接に支配を及ぼしている状態を意味します。
例えば、債務者が、別居しているとか家出をした場合であっても、所有財産に対しては占有が続いていて、留守を守っている家族が保管をしているだけに過ぎないとされるので、債務者が占有する財産として差し押さえができるとされています。
旅行中などでも、自宅にある家財道具は所持しているものとみなされます。
通常、建物内にある動産については、動産の主要な使用者の占有下にあるものとみなされます。
数人の家族が同居してるようなケースでは、動産の性質や外観から特定の人が占有しているということが明らかであるときにはその人の占有だと認めることがあります。
例えば、洗濯機や冷蔵庫等は世帯主の単独所持とされますし、学習机などは子供の専用品とされる扱いになります。
また、子供の専用の部屋などにあるパソコンや、ゲーム機などもその世帯の収入などから、子供の独立の占有とされることもあり得ます。
現金が誰に帰属するのかも、これに準じて占有者を決めることになるかと思います。
店舗兼自宅の場合の動産差押え
過去の事例では、債務者の自宅建物について、1階が店舗、2階が居宅となっており、店舗は債務者の家族が経営しているケースがありました。
営業許可の名義人が家族であると認められた場合には、その店舗の占有者は、家族であり、債務者ではないと認定されたケースがあります。
このような認定がされた場合には、店舗にある現金は、占有者が違うので、差し押さえの対象外という扱いになります。
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